倉敷を訪れた。
保存された町並みは風情があって、なにもかもがとても素敵。

そんな倉敷で、私が一番気に入ったのは、「大原美術館」です。
大原美術館は、倉敷を基盤に幅広く活躍した事業家大原孫三郎氏が、
親しい友人だった画家・児島虎次郎を記念して昭和5年に設立した施設。
日本美術のコレクターでもあった孫三郎は、虎次郎の才能と、美術に
対する真摯な姿勢を高く評価し、三度にわたる渡欧をうながします。
虎次郎は、ヨーロッパで制作に励むかたわら、孫三郎の同意のもと、
日本人としての感覚を総動員してヨーロッパの美術作品を選び取り、
日本へ持ち帰りました(大原美術館ウェブサイトより)。
一歩美術館に入ると、その作品の幅広さ、そして素晴らしさに圧倒され
ます。本館には、エル・グレコ、ゴーギャン、モネ、そしてルノワール。
近代作品では、ピカソ、マティス、モディリアーニ、カンディンスキー
まで。いずれも世界に名だたる巨匠の作品が、多くは一点ずつ、大切に
展示してあります。
はじめ、一点ずつ集めたということを聞き、寄せ集めのようになっている
のではないかと思ったのですが、それは杞憂に終わりました。初めて見る
作品が多くても、その画家の画家たる所以がしっかりと滲み出ている作品
ばかり。それは、虎次郎というひとが、あるいはかのひとの遺志を継いだ
誰かが、その存在をかけて選び抜いたがゆえの結果なのかもしれません。
そして、現在に至るまで、それらの作品をとても大切に扱っていることが
感じられるのです。それは、部屋においてある椅子の置き方ひとつ、注意
書きのひとつ、庭園の手入れのされかたひとつ、そして職員の方々の立ち
居振る舞いのひとつひとつから、感じ取ることができます。
ルーブルやオルセー、メトロポリタンやスミソニアンをはじめとする
メガ美術館も、同じように大切に作品を保護していました。
けれども。
大原美術館で感じられる「愛の密度」を越える美術館に、
私はいまだ出会ったことがありません。
