とても懐かしい名前を耳にした。
伊藤隆道。
といっても、ほとんどの人にはたぶん耳慣れない名前だと思う。
彼は、造形アートの分野で名を広め、芸術家として活躍しながらも
東京藝術大学の教授にまでなった。
上野の藝大ギャラリーで、彼の個展がひらかれていたのを
たまたま通りかかって目にしたのだ。
よく見ると「退官記念」、そして開催期日が「2006年1月5日まで」
えっ、退官されるんだ。
えっ、今日までだったんだ。
そうそう、彼とわたしのつながりを書き忘れていた。
彼は、わたしの弟が中学生の頃、東急ハンズの「ハンズ大賞」に
応募したときに、「審査員特別賞」をくださった方。
私自身は、実際にお会いしたことは、ない。
今彼の作品をみると、なぜ弟の作品を彼が選んだのかよくわかる。
そこにある不思議な美学の共通点。
そして、驚いたことに。
いた。
いたのです。
そう、会場に彼が。
最終日だからだろうか。
黒い洒落たスーツを着て、暖かい笑顔で訪問者と会話をしている彼。
「きっと覚えていないかもしれない」
「審査員なんて星の数ほどやっているのだから覚えてないにきまってる」
とても迷った末、声をかけさせていただきました。
残念ながら、彼は、弟の作品のことは覚えていませんでした。
それでも。
今まさに教授という立場から、
芸術家として歩んできた道に回帰をしていく彼に、
10年越しで出会えたという事実が静かな感動として迫る。